脱原発はソフトランディングが絶対必要

もし、国民が原発にNOということであれば
日本は技術先進国として、脱原発のソフトランディングを目指すべ­きです。
地球温暖化対策は異常気象の防止だけでなく島嶼諸国が水没から免­れるためにも緊急の課題です。
化石資源争奪をめぐる国際関係の緊­張緩和も考慮する必要があります。
また、日本は貿易立国です。したがって製­造業の電力コストを低減することは一企業の競争や存続といった側面のほかに国家財政面からも大変重要です­。
つまり、日本としては製造業の空洞化が国力の空洞化に直結することを避ける必要があります。
もしそれができなければ日本の財政はIMFの監視下に置­かれ、中国を含む他の経済大国の様々な干渉に耐えなければならな­い未来が待っています。
財政破綻は国民への増税でしか、リカバーできない状態となるので­す。ギリシアを見ればわかりますね。
そういう意味でも、脱原発をするのであれば、ソフトランディングで行わねばなりませ­ん。
原発の再起動はもちろん、現時点で計画されている原発建設は着手し運転する、その代り、古い原発は廃止する。新設するプラントで、安全性と効率を高めつつ、原子炉数と原発電力への依存率を確実に計画的に減らしていくべきです。その間にシェールガスメタンハイドレード等の天然ガス資源の開発や安定輸入も進めていきましょう。
原発の輸出は当面推­進されるべきです。原発は運転や開発だけでなく、除染や放射線防護のノウハウも維持し続けなければ安全な廃止はできないのです。50基を超える炉、PWR,BWRの2種類を安全に廃止措置するのですから、技術やノウハウが劣化してはなりません。

原子力技術は原発を止めても、医療や生物化学、その他の産業に生­かされるべきでしょう。科学技術の保全の問題も解決しなければなりません。
廃止に伴い、医療や諸工業で利用されている放射性物質を原子炉以外から確保する研究も必要となるでしょう。


というわけで、2060〜70年をめどに全原発が停止できるように再生エネルギ­ー、核融合エネルギーを開発し切り替えて行くというのが現実的と思いま­す。
天然ガス等の化石燃料依存も先進国として早期に脱却する必要があるのは言うまでも有りません。



原発の即時廃止が可能と言うのは神話だ
原発が無計画に即時廃止となれば日本の原子力技術は米国かフランス、ある­いは韓国に技術者ごと献上されることになるでしょう。

日本産業の空洞化は産業の国際化と表裏一体です。空洞化による国力の弱体化を防ぐためには大改革を数年で行う必要があります。
日本人の殆どが北欧人­と同じように20代〜40代を海外で日本企業のため生産・経済活­動を行い、50代で帰国するという人生を送るようになるでしょう­。
計画の無い原発の即時廃止はそういった社会変動を急速に引き起こします。
本来なら社会制度や教育制度を変換する準備期間が事前に充分必要です。つまり、海外で生産販売活動ができる人材を2人に1人以上育て上げる社会を作る必要があるということです。
第一次産業、第3次産業も海外労働者が増大するとともに大きな変貌を遂げることになるでしょう。
改革の準備期間があろうとなかろうと、社会が変貌するまでの間に多くの失業者が出ることでしょう。深刻な社会不安による暴動やクーデターも起きるかもしれません。

もちろん、改革が中途で失敗すれば失業者があふれる債務国として、中国を含む他の経済大国の様々な干渉に耐え忍ぶ日々が待っています。
そもそも、そのような改革を国民が受け入れるでしょうか?

ホルムズ海峡の封鎖や東シナ海南シナ海、その他で国際紛争が起き、第3の石油ショックや「天然ガスショック」が起きると言うリスクを抜きにしても、原発の即時廃止は日本社会を急速に変えることでしょう。

こう考えれば、原発安全神話と同様に原発の即時廃止も神話であると分かります。
日本はエネルギーの多様化を図り、科学技術と物作りで復活を目指­し、先進国としての義務も果たす国であるべきです。
原発は資源小国日本で必要なエネルギーであり、なくなればどうなるかを政治家は国民に提示すべきです。



付言ですが、日本の電気料金は家庭用も産業用も高い。米国の一部­­の州の倍ぐらい(米国は州ごと会社ごとに電力料金が違います)­。
主に原材料の輸入単価のせいです。

しかし、原発を減らしたら、どうなるでしょう。もっと高くなりますよ。

ドイツに行ったことがありますか、田舎に劣らず都市部でも夜は暗­­いですよ。電気代が高いのでオフィスでも夕方遅くなるまで電気­は­付けません。エネルギー関連のコストには国民はみんな関心を­もっ­ています。電気代も高いですし、環境意識も高いです。ちなみに再生エネルギーの買い取り価格は日本(で予定されている)価格より、1割以上低いのにも拘らずです。
乾電池の値段は日本の8倍以上です(消費税も高い)。
彼らは高いコストのエネルギーを10年以上かかって受け入れました。
主要自動車産業原発の多い南部に集中しています。そして、自動車産業も含め主要製造産業の製造拠点は東欧に重心を移しました。電力コストと人件費コストのせいです。もともと欧州は階級社会­­ですが、マイスターになり損ねると、ブルーカラーの失業の危険も大きく、事実失業率は10%位です。高等教育を受けても語学ができるかどうかはドイツの企業で働く際に自分の­職­域を左右する問題です。なにしろ、主要な製造拠点がドイツ国内から逃げてしまっているのですから。

脱原発は社会変動をもたらします。賛成反対に拘らず国家レベル、­­個人レベルで対応を急ぐべきです。