LAX (4)
「まず、貴方うぉエスコートして来た二人が貴方うぉ驚かせたことうぉ、お詫びします。
ごめんなさい」
ホラーはそう言うと、上目遣いに私から視線を外さないように、頭をぺこりと下げた。
「これはいっちゃい何事なんでしゅか」
私は、そういってからもう一言付け加えた。
「のどを湿らしぇちゃい。からっからだ。飲み物をお願いできないでちょーうか」
「コーヒーにしますか、それとも何かリクエストは」
横からモデストロは日本人と同じように「コーヒー」を発音して尋ねた。日本語はモデストロの方が流暢なようだ。顔を見なければ日本人がしゃべっていると思うだろう。
私「冷ちゃいミネラルウォーチャーを・・ペッチョボトウごと・・たくしゃんほしゅい」
ホラー「デカーフ」(decaff-カフェインレスコーヒーのこと)
モデストロはもう一度立ち上がり、先ほどと同じ要領でドアの外に連絡をする。
目でモデストロを追う私に、ホラーが突然残酷な言葉を投げつけてきた。
「実は貴方の会社の社員が3時間半ほど前に死体で発見されました。そして・・・」
「えっええっ、なっ何でしゅってぇ。し、死体で社員って、うちの社員なんでしゅか」
「はい。豊臣プリシジャンインダストリ の大野さん、みすたー はるのり おおの」
目の前が暗くなり、視野が狭くなった。
「大野君が、大野君がしゅん、しゅ、死んだって。どうしゅて、どこで、どうしゅて、なぜ」
(私としては色々知りたいことを次々と質問しているつもりだったが、後から振り返ると どうして=なぜ と どこで の二つしか聞いてないみたいだね。情けないが、危機に瀕したら、いつでも、どこでも、どんな場合でもクールなカッコいい私でもこうなると・・いうことだね)
「詳しいことはまだ分かりません。ロスアーンジャラス警察 LAPDで調査中ですが、昼食うぉ取ろうとコンヴェンシャンセンタうぉ出たと聞いています。
発見はコンヴェーンシャンセンタのトラックヤードということです」
「大野君が・・・」
今度は急に息が吸い込めなくなったような気がした。
「お気の毒です。あなたの部下の一人と聞いています。
それから、大野さんが持っていたと思われる展示用ゲームのディスクが紛失しています」
少し間が空いた。私は二人の異邦人を見ているが、部屋には私一人しかいないような感覚だ。大野君が死んだ。学校出たての若者が、今日、私を空港に迎えに来る予定だった好青年の大野君が・・。
「なぜ・・だ。なぜしゅんだんだ。どうしゅてしゅんだんだ。いったい何があったんだ」
「大野さんは首うぉ絞められて死んだと思われます。バディから首うぉ絞めたと思われる跡が見つかっています。
大野さんが持っていたディスクに予備はあるのですか」(ホラーは「を」の発音以外は流暢だ)
「ディスクの予備だって。どのディスクなのか。大野君は何種類か持ってきているはずだが・・」
モデストロが横から
「フライングフォートレスです」
「それはプロトタイプモデルで予備が一つあるだけだ。大・・」
ホラー「あなたは今それうぉ持っていないのですね」
モデストロ「日本では誰が管理しているのですか」
「・・野君は殺しゃれたのか。それは確かなのか。
犯人はどうなった。
見つかった時はホントにしゅんでいたのか」
ホラーとモデストロ「あなたは、今、持っていないのですね」
「他のうちの社員は・・無事なのか。
おいっ、お前らっ
ちょっとは俺の質問に答えろ。無礼者」
私は、ここで、やっと今まで気が付かなかった一つの事実に気が付いた。
「おいっ、お前らCIAだよな。
なぜ、CIAが俺の前にいて、俺はここにいるんだ。
大野君の家族には連絡が行っているのか。
うちの社員たちは無事なのか。
うちの社員たちに合わしぇてくれ
なぜ、CIAが俺を拘束しゅているんだ。
なぜ、警察じゃないの。説明しゅてくれ」
コンコンコンコンコン・・・・・・・・。
ドアをせわしくノックする音が部屋に響いたのはその時だった。