LAX (7)
なんでCIAが日本人の俺を調べるんだ。
なぜ、こんなに俺の家族のことを知っているんだ。
大体おかしいじゃないか、そもそもなぜ大野君が殺されたのが、フライングフォートレスと関係があると断言できるんだ。
合衆国と同盟国日本の安全だって・・・。
わたしはグラスに水を注ぎ、今度は飲まずにテーブルに置いた。
ホラーが私のバッグからパソコンを取りだしている。
「ホラーさん、フライングフォートレスが原因で大野が殺されたというのですか」
ホラーの手が止まった。
「その可能性が高いと我々は判断しています」
私はしぶしぶ携帯をモデストロに渡した。
「ご協力感謝します」
とモデストロ。
「一体、何が起きていると言うんですか。ホラーさん」
「それうぉ我々も知りたいと思っています。それで、後藤さんに協力うぉお願いしているのです」
「日本の会社の製品が産業スパイに狙われたからと言って、なぜCIAの出番があるのですか。アメリカの会社のバイオやスーパーコンピューターの最新技術なら理解できるが・・。
フライングフォートレスは日本の会社の、それも民生用のゲームですよ」
「あなたも豊臣精密工業の技術マネジャーとして、どんな技術がこのゲームに使われているか知っていると、我々は思っています」
とモデストロ。
たしかに私は知っている。只のゲームではない。ゲームの基幹をなすのはソフトウェアだけではなく、豊臣精密工業の得意とする極小ハードウェアを用いている。それが、他のゲーム機器と差別化された特徴なのである。会社としてはソニーやマイクロソフトの牙城にハード込みで殴り込みをかけようと考えた野心的な製品なのである。
「だが、それは豊臣だけが持つ純国産・・・ I mean ・・・純日本産の技術ですよ。アメリカ政府が保護するようなしろものではない」
「その認識の甘さが今回の事件につながったのかもしれませんよ」
とモデストロ。
「その通りです」とホラーが「パソコンと・・・・・携帯のパスワードうぉ教えていただけますか」
と続けた。
「携帯は教えても良いが、パソコンは企業秘密があるので教えられない。どうしてもと言うなら法的な手続きをお願いしたい」
「さきほどもお話ししたように、人の生命がかかわっています。貴方の命もです。パスワードうぉ教えて下さい」
「私の身の保護と企業秘密とは別でしょう。貴方がたは何かまだ隠している。
まずは、日本大使館と連絡を取ってくれ」
「貴方は合衆国市民ではないので、合衆国政府職員は職責で、つまり、令状無しでパソコン、携帯の情報うぉ見ることができます。
任意でご協力いただけないなら、こちらで調べるまでです。パスワードうぉ教えて下さい」
「日本大使館と話をしてからです」
「どうしてもですか」
とモデストロ
「日本大使館と話をして納得できたら、協力しても良いと言っているんだ」
モデストロとホラーは目くばせをした。
ホラーが私のパソコンをバッグに入れ直してモデストロに渡す。モデストロは私の携帯を手に、バッグを小脇に挟んで立ち上がると、私のスーツケースを転がしながら、ドアに向かった。
「おい、どうするんだ」
「私たちで暫くお預かりします。それほど時間はかからずに、すぐお返しできると思います」
とホラー。
「後藤さん。貴方がたの開発した製品うぉ合衆国うぉ攻撃する武器に転用しようとしているグループがいるのです。そのグループが我が国での展示会うぉ狙って行動うぉ起こすのではないかと言う情報があったのです。
詳しいことはお話しできませんが、我々CIAが合衆国大統領府の命令で動いているのは、そういう高度な政治判断があったからなのです。
わかっていただきたいと思います」
ドアのところで物の受け渡しが終わったモデストロが戻ってきた。
私は、テーブルに置いてあった水に口をつけた。(ね。水を飲んで喉の渇きが止まったら、「さしすせそ」言えるようになったでしょ)