LAX (2)

部屋には、二人の男が座っていた。

アルマーニを着込んだ40半ばの男と、30になるかならぬか、まるで、今シャワーを浴びてさっぱりしてきましたよ、という感じの見るからにスポーツ青年らしき若者が、これも高級そうなスーツを着込んで革張りの椅子に座っている。

私を連れてきた二人組が

「ミスター後藤です」

と言うと、座っている若い方がアルマーニに頷いてから、こっちを向いて、

「サンクッユー、グッジャブ」

それで、肉体労働の役目を終えてご苦労さんと言うことなのか、肉体派二人組は部屋の外へ、向かう。

私をエスコートして来たと言えばよいのか、拉致して来たと言った方がよいのか、良く見るとその二人は、どうやらアジア系だったようだ。わたしはショックでその時は顔すら確かめていなかったらしい。

その二人が部屋のドアを開けると、さっきまで誰もいなかったドアの向こうに先ほどの武装警官が見えた。見えたのは一人だが・・・。

「後藤さん、びっくりなされたでしょう。我々は政府機関の者です」

若造が日本語で話しかけてきたので、また、びっくりした。

「あなたに危険が迫っているということで、手荒な手続きを取らせていただきました」

と言って立ち上がった。

わたしは部屋を見回した。

窓の無い部屋だ。部屋の奥隅に観葉樹が置いてあり、あとは応接室にお決まりの革張りの一人用の椅子が長四角のコーヒーテーブルに片仮名のコの字型に4つとロングソファーが一つ置いてある。

「中央情報局極東アジア経済担当のギルバート モデストロです。こちらは同じく極東アジア担当のジェフリー ホラー、私の上司になります」

わたしはモデストロの手を握り、ホラーの手も握ったが、Nice to meet you の気分では正直なかった。後で、(そう皮肉で挨拶してやれば良かったのに・・。うむむむっ)と思ったが、

「What's going on?(これは何事ですか)」

と、乾いた口と喉から声を絞り出した。(相手が日本語で話しているのに・・・わたしはなぜ英語を口走ってしまったんだろう。これが童謡か、否、動揺というものなのか)