LAX (1)

ランディングは順調だったし、機体が搭乗口に横付けされた時も、手荷物を人の頭の上から一斉に取り出して出口に向かう乗客たちの解放感も、いつも通りだった。

飛行機とコンコースをつなぐ通路の先から、いつもと違うざわめきが起きていたのが、最初の違和感である。

ノートパソコンと会社の重要書類だけを詰め込んだバッグを肩に、足を進めていくと、ざわめきは乗客たちがある光景を見て驚きの声を上げているのだと解った。搭乗口を出たところでユニフォームの一団が整列しているのだ。軽マシンガンで武装したSWATと思しき警察官が左右に10名ほど、乗客の通る通路にそれぞれ皆、背を向けて整列しているのだ。

「ミスター後藤!ミスター後藤!?」

私は後ろからいきなり左腕の半ばを掴まれて、ショルダーバッグを落としそうになりながら足をとめた。

「ミスター後藤ですね」

「我々はアメリカ政府の者です。こちらへ」

私はウンともスンとも言わず(言えず?)、頷きもしなかったが、屈強な若者と壮年の二人に腕を取られ、私は半ば引きずられるように乗客の波を超え、スタッフオンリーの通路、やがて空港管理センターと思しき建物へ、そして、一つの部屋に連れてこられた。

この間、1分とかかっていない。

私は

「いったい何だ」

という一言を数度発しただけだ。

もっとましな言葉や質問ができなかったものか、情けない。

どうやら、私はトラブルに巻き込まれたらしい。

 

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