LAX (8)

「後藤さん、パソコンと携帯は夕食までにはお返しします」とモデストロ

「豊臣精密でディスクを管理しているのは亡くなった大野さんと貴方、後藤さんの他には誰になるのですか」と言いながら腰を下ろした

「二人だけだ」

「今日本に予備があるという話でしたが、それは誰が持っているのですか」

「それは・・・」私はちょっと心に何かが引っ掛かった。「ここはアメリカだ。なぜ日本のことまで聞きたがるのだ。日本において我が豊臣精密工業がどのような管理体制で物を管理しているかは、君たちの管轄外だろう。社外秘についてはお話しできない」

「では、質問を変えますが、我が国に持ちこんだディスクは大野さんが持っていたディスクだけで、我が国に他のディスクは存在しないのですね。貴方が持ってきていないということですから」

「その通りです」

「豊臣精密アメリカの社員はディスクうぉ持っていないのですね」

とホラー。

「その通り」

「合衆国にフライングフォートレスの技術的知識うぉもっている人は、今現在は貴方しかいないということですね」ホラー

「その通りだ」

「フライングフォートレスの技術資料は、本日貴方がもってきた荷物の中にはあるのですか。パソコンの中にあるのでは」ホラー

「パソコンの中にはプレゼンテーション用の概略の仕様が入っているだけだ。社外秘やノウハウ、詳細技術仕様は入っていない」

「詳細仕様や使われている部品、下請け加工メーカー名は」モデストロ

「入っていない」

「組立図面は」ホラー

「そんな社外秘に類するものは一切入っていない」

「貴方の頭の中に入っているので大丈夫ということか」モデストロ

「それもあるが・・・仕事の必要があれば、会社のサーバーやらクラウドの中で参照したり、文書を作ったり、図面を書いたりする時代だからね。技術仕様が盗まれる心配をしてパソコンや書類を持ち歩く時代ではない」

「それでもディスクは盗られた・・・」ホラー

「貴方がそう言った。私は確かめていない。

大野君にも他の社員にもまだあってもいないし、連絡もとらせてもらえない・・・・・

捜査は進んであるのでしょうね。取り返していただかないと。社長がどうなったかも・・・」

コンコン、コンコン、コンコン、

コンコン、コンコン、コンコン

ドアがノックされた。こんどは先ほどとは異なり、リズミカルなノックだ。

ホラーとモデストロがさっと立ちあがった。

ホラーとモデストロの二人が何も言わずに、ドアへ向かう。

ドアを開けると外と何やら早口で二言三言やり取りした。

ドアの向こうの相手が

「コード2ADI」と言うのが聞こえた。

ホラーとモデストロが部屋の外に出た。モデストロが後ろ手でドアを閉めた。

急に静かになる。

1分ほどたった。

私は立ち上がり、背伸びをしてドアに向かった。

ノブに手をかけるとロックされている。

外に人の気配はあるが、誰の話声も聞こえない。

私はこちら側からドアを叩いてみた。

コンコンコン

「プリーズ、ステェイゼア ナッシング ウォウリーアバウッツ」

どうやら、ホラーもモデストロもドアの近くには、いない・・ようである。

私は理不尽にも、不当にも、部屋に監禁された・・と思った。

(自由の国アメリカと言うが怖いもんですね)