原発放射線の実体とデマ

新聞に「私たちだけだったら、放射能は気にならないから住み続けることができる。でもやがて生まれる孫が私たちを訪ねて来れなくなる」と福島を離れる理由が書いてあった。新聞は住民の気持ちを伝えるのも大事だが、事実として乳幼児が暮らしても問題ないと伝える仕事もこなすべきだ。

「村に祟りがある。私たちは祟りにあって死んでしまっても良いが、子や孫は困る」という報道がまかり通るのは未開国家ならともかく、文明国家の報道ではない。住民の気持ちは気持ちとして伝えても、それが迷信だと伝えるのを放棄しては、デマを流しているようなものだ。

一方でデマを流し、デマを信じた人たちが起こす不必要な騒動を同情的に報道するとしたら、混乱に拍車がかかる。記者が「祟り」を信じているか、無責任なのかどちらかである。いずれにせよ、デマの垂れ流し状態は非難されるべきである。

自己の信じる仮説に合わないからと言って、事実を否定しては科学が成り立たない。事実の方を自分の仮説に合わせるのではなく、仮説を疑うべきである。チェルノブイリの死者が国連科学委員会の調査で60数名だったと聞いて、何十万人も死んでいるはずだと主張するのは、まさにそれと同じだ。


確かにチェルノブイリ事故が起きた当初から、つい数年前まで、死者数の予測と言うものが出回っていた。4千人から98万5千人まで、実に様々な予測がなされた。しかし、実際は甲状腺がんによる死者は15名。急性放射線障害での死亡者数は最大で48名。合計は63名だった。

周辺住民に対する放射線の影響 子供6000人以上に甲状腺がん発生が認められた。その全てが例外なく高濃度に汚染されたミルクを飲用していた。その内、 甲状腺がんによる死者は15名。


復旧作業員 急性放射線障害者数 134名 その内 事故後1カ月内の死亡 28名 その後の死亡 20名以下 急性放射線障害での死亡者数 最大で  計48名


放射線の影響でのチェルノブイリ全死亡例の合計 最大 63名 これはUNSCEAR 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 によるチェルノブイリ事故後25年のまとめである。2008年にまとめられた後2011年に見直しをされている。 新聞社テレビでもっと取り上げるべきである。

UNSCEAR 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)がその委員会である。
信用すべきなのは放射線医学の専門家であって、原子炉の専門家ではない。

原子炉や原子力機器の専門家が自分のやっていることに自信がなくなるのは勝手である。ただ、健康上の影響に関し予断を与えるような主張は止めるべきだ。放射線医学の専門家がその領域で話をすべきである。



放射能の恐怖に脅かされて、故郷に戻れず不便な生活を強いられる住民の皆さん。放射線医学の専門家の話だけを信じて下さい。新聞社やテレビや自信を喪失した原子力工学者や政府の言うことは考慮にいれる必要はありません。 放射線よりストレスが心配です。

ストレスは鬱症や心筋梗塞を招きます。持病の悪化を招きます。今まで元気だった人が急になくなるような呼吸系や循環器系の病気を引き起こします。現在の放射線レベルは通常の生活を送ることができるレベルです。農産物や魚類にも影響はありません。充分な監視をしているではありませんか。

根拠のない「祟り」を信じるのか、世界の科学者を信じるのかはご本人次第です。科学者ですら、判断材料が無ければ間違えるのですから。 私は同じ間違えるなら事実をベースにする科学を信じます。

原発絶対安全神話原発恐怖神話、原発即時停止が可能神話。全て科学的論拠から外れた神話である。科学は事実から演繹する。神話は事実を神話に当てはめようとする。 何を選択するかは自由だが、私なら神話は神話として尊重するが、現実の手段や目的としては神話は選択しない。



FBIとNSA (15)

「後藤さん、まずはこれをお返しします」

ダールと紹介された男が私のパスポートと携帯をテーブルに置いた。

「パソコンはどうした。奴らはパソコンも持って行ったぞ」

 「貴方の手荷物の中に戻っています。

我々FBIは貴方のプライバシーとあなたの会社の機密を尊重するよう指示を受けております。

ご安心ください」

「いや、いや、安心できない。この部屋にすぐ持ってきてくれないか」

と私は興奮して答えた。

「直ちにお持ちします」

キャステラが語尾に「サー」をつけて答えると立ち上がった。

「CIAは貴方に失礼なことをしましたか」

とダール。

「失礼と言うか、協力してくれと言う割には、脅し文句こそなかったが、ずいぶん強圧的だったよ。

君たちに怒りを向けるべきなのかどうか・・・解らないが・・・今になって思い出すと腹が立つよ。

携帯の通話履歴とか、パソコンの中身を勝手に見られてしまったようだし・・・。

君たちも私の持っていた情報を既に手に入れているんだろう」

「ご安心ください。

彼らにその時間はなかったはずです。それに私どもは令状なしにそれが個人であれ、会社であれプライバシーを勝手にのぞき見ることはしません」

「本当だか、どうだか・・・。

令状と言えば、モデストロかホラーかどちらかが、私がアメリカ市民ではないから令状なしでパソコンの中身を調べられるとか言って、パソコンを取り上げたんだから、携帯も・・・」

「それは、でたらめです」

「令状はいるんだろう」

「その通りです。アメリカ国土にいる全ての人間に対し、平等に法は施行されます。

もしそんなやり取りがあったのなら、アメリカ市民として大変恥ずかしいことです。あやまります。FBIから正式に抗議を入れましょう」

「ぜひ、そうしてほしいね。ところで、本当に私のプライバシーと会社の機密は守られたんでしょうね」

「FBIが保証します」

私は、ふうーっと溜息をついて、一旦黙り込んだ。

「大野さんの件ですが、コンベンションセンターでの出来事は総領事館の佐藤氏が伝えた通りです。事件はロスアンゼルス市警からFBIに管轄が移りましたので、私のところに報告が入ります。詳細が分かりましたらハーブからお伝えします。

また、後藤さんには、大野さんにこのあとご対面いただく予定です。もちろん、こちらにいるあなた方の会社の関係者にも。

のちほど、ハーブが貴方をご案内しますし、その時までにはもう少し詳しい話ができるかもしれません」

とダールは続けた。

「そうだ・・・大野君といえば、家族には連絡が行っているんだろうか」

ロスアンゼルス市警から日本総領事館経由で連絡が届いていると思います。

また、日本の首相官邸にも連絡していますから、問題はないと思います」

首相官邸だって」

内閣官房に連絡が行っています。日本政府の協力が必要になるので、一般の事件の扱いではありません。防衛省にも伝わっているはずです」

とダールがブライトマンを見るとブライトマン

「イエスサー」

と返事をした。

「ちょといいかな」

私は携帯を指差して言った。

「どうぞ。ただ日本は午前7時ぐらいですから、会社にかけるにはちょっと早いかもしれませんよ」

とダール。

私は携帯を手に取り、飛行機から降りてまだオンにしていなかった電源を入れた。

「それでは、ちょっと失礼・・・」

ようやく動き始めた携帯のアドレス帳からその名前を選び出し、ボタンを押した。

 

 

 

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