動画サイト等で、南朝の皇統を継ぐ人物が幕末に存在したということを紹介しているものが見受けられますが、いずれも根拠が乏しいものばかりです。
画像は、現代史の一人者である秦郁彦先生の「昭和史の謎を追う」熊沢天皇始末記の一節からスキャンした画像です。
南朝の血統の行方を記す最後の信用できる史料が記す「長禄の変」について説明がなされています。
田中義成博士「南北朝時代史」の長禄の変の項には「吉野の山奥に尚南朝の皇子二人御座し・・・・・共に御名並びに御系統を審らかにせず・・・」の記載がある上月記、赤松記を紹介して、これ以上の資料がまだ発見されておらず、今後も期待が出来そうもないと論じられています。
正統な歴史に史料を以って異議を唱えるのは学問の自由でよろしいが、インターネット上で真実であるかのようにデマを広げて貰っては困るのです。根拠を示す資料がない場合は、自分の意見であることを示すか、創作や空想、仮説の類であることが分かるよう明記するべきと思います。