原発再稼働と中国・韓国のマスコミの論調


一月ほどの海外の報道を斜め読みしてみた。

どうやら中国は旧ソ連が行ってきた
1.「西側の原子力開発は核兵器開発であり、平和を脅かすものである」
2.「西側の一方的核軍縮こそが世界平和に寄与する」
3.「原発事故はカタストロフィックな健康被害を及ぼす」

といったプロパガンダを忠実に引き継いでいるようだ。上記の切手の意匠をご覧いただきたい。旧ソ連北朝鮮反核兵器・平和祈念切手である。自分たちのことは棚に上げて平和国家を標榜しているのが皮肉だ。右は反戦反核の集いに何故か中国語。いずれも古い資料である。


『中国発の反日プロパガンダとして、今後は「日本は放射能に汚染­さ­­­れている」等の噂についても注意しておく­必要がある。チェルノブイリ事故で恐怖を煽る報道がなされたことは有名だし­­­­、福島においても近隣の住民に死が宣告されたような報道が­世­界­中でなされた』
と一月以上前に私が懸念した通り、原発再稼働を契機として中共と­マスコミの論調がおかしくなって来ている節がある。

下記は私の感想(黒字上段)と最近の記事(青字部分)である。


日本の宇宙開発が平和を脅かし、中国の開発が平和的だと言うのは­プロパガンダである。
「日本の宇宙事業、軍事的色彩が濃厚に」 中国網日本語版(チャイナネット)6月27日付け


日本の原子力政策が危険で中韓原子力開発が危険でない理由があ­るのだろうか?
「日本は核武装カードでわが国を牽制する意図あり」中国網日本語­版(チャイナネット)6月26日付け
「日本が「原子力基本法」に原子力が安全保障に寄与するという条­項を盛り込んだのは、核を軍事目的に使用するための障壁を一掃す­るためで、その背後には中国脅威論の影響がある」朝鮮日報(電子­版)6月22日付け


最近の中国の記事には原発汚染を強調する論調が多すぎる。これは­プロパガンダといえる。
「日本の不動産価格に底値感、賃貸市場が活性化」中国網日本語版­(チャイナネット)6月30日付け
『11年3月には大震災と原発事故が発生しており、日本の不動産業­界はまさに泣き面に蜂の状態だ』原発事故の影響をさりげなく強調している。


日本の核武装が危険で中国の核武装は危険ではないらしい。
「日本が原子力基本法改正で、核武装に対する懸念が広まる」中国­網日本語版(チャイナネット) 2012/06/29(金)付け


どうやら中国は自国の原発は棚に上げ、日本の原発(政策)は危険だとキャンペーンしているようだ­。 旧ソ連と同じだ。
「日本が原発を再稼働へ世界から疑問と不安の声」中国網日本語版(チャイナネット)は6­月29日付け


中国では日本の原発を軍事兵器と結びつける考えが一般的なようだ。
中国人コラムニストの陳言氏「今後の「野田首相には3つの難題が立ちはだかる」中国網日本語版(チャイナネット)5月
中国社会科学院日本研究所の張季風研究員は「日本の全発電所の発電能力は国内の電力消費量をじゅうぶんに賄える水準を維持している。また、休眠中の火力発電、水力発電などを再稼働させれば、それほど深刻な電力不足に陥ることはない」と述べている。
だが、野田首相にとってはそれほど単純なことではないようだ。ここで日本が原発を切り離してしまえば、今後、軍事兵器を含む原子力技術を保有することがかなり困難になり、停止した原発を再稼働する際には国内外からの批判の矢面に立たねばならないからだ。」


中国のマスコミは韓国のマスコミを使って、あたかも中立的な第三者を装って自らの主張をしているようだ。
2012年7月、日本で浮上した集団的自衛権憲法解釈再考問題について、韓国メディアは「日本の右傾化は深刻だ」と強く批判した。2012年7月7日環球時報


旧ソ連では西側の一方的な核の削減こそが世界平和に寄する云々という上記のような­宣伝工作が広く行われていたことを忘れてはいけない。
日本の反核運動アメリカの核兵器は許さないがソ連のそれは許容する」という論理がまかり通っていた事実を思い出して欲しい。そしてそのような反核団体の中で反原発が題目のように唱えられてきた事実があることも・・・。科学的反論をする良心的な原発推進反対派はごく小数であったことも・・・。

私は脱原発は早いに越したことはないが、それでも30年かかると­思うし、少しでも早めるためには市場原理でエネルギー開発競争を促すことが重要と考えている。
また、国力を落とさず、安全保障面(防衛だけではなくエネルギー確保や食料­や水の確保や途上国援助といった物も含めて)に十分配慮して行う­べきだと思う。
少なくとも日本経済の弱体化を価値観の異なる体制を持つ国々に利­用される機会を与えるべきではない。
中共とそのシンパ勢力のキャンペーンや情報宣伝に惑わされてはい­けない。



旧ソ連が西側の原子力開発を牽制するために、チェルノブイリ事故­で恐怖を煽る報道がなされるように宣伝工作をしていたことは有名­だ。
福島においても近隣の住民に死が宣告されたような報道が­世­界­­中でなされたが、このような報道はチェルノブイリの幽霊で­あったと言える。
しかし、いままた、それを利用しようとする勢力がいるかもしれない。
私たちは利用されてはいけない。利用されようとしていると感じるのが私個人の老婆心からくる懸念に過ぎないことを祈るのみである。
少なくとも、日本のマスコミや政治家が「原発推進が日本を滅ぼす」というような事大主義的な論調で、all or nothing の結論が必要とされているような論議を煽ってはいけない。



チェルノブイリの幽霊
<<参考:チェルノブイリ原発事故の実体と虚構>>

((実体調査による実数値))

UNSCEAR 原子放射線の影響に関する国連科学委員会
(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)
によるチェルノブイリ事故後25年のまとめ

周辺住民に対する放射線の影響
子供6000人以上に甲状腺がん発生が認められた。その全てが例外なく高濃度に汚染されたミルクを飲用していた。その内、
甲状腺がんによる死者の実数。   15名

復旧作業員
急性放射線障害者数 134名 その内
事故後1カ月内の死亡 28名
その後の死亡 20名以下
急性放射線障害での死亡者数 最大で  計48名

放射線の影響でのチェルノブイリ全死亡例の合計 最大 63名



((参考:過去に予測された死者数))
チェルノブイリ 放射線の影響 Wikiより抜粋引用

1986年8月のウィーンでプレスとオブザーバーなしで行われたIAEA非公開会議で、ソ連側の事故処理責任者ヴァレリー・レガソフは、当時放射線医学の根拠とされていた­唯一のサンプル調査であった広島原爆での結果から、4万人が癌で死亡するという推計を発表した。しかし、広島での原爆から試算した理論上の数字に過ぎないとして会議では4­,000人と結論され、この数字がIAEAの公式見解となった。

2005年9月にウィーンのIAEA本部でチェルノブイリ・フォーラムの主催で開催された国際会議においても4,000人という数字が踏襲され公式発表された

WHOの国際がん研究機関 (IARC) は、ヨーロッパ諸国全体(40ヶ国)の住民も含めて、1万6,000件と推計した。

欧州緑の党による要請を受けたTORCH report は過剰癌死亡数を約3万から6万件と推定した。

環境団体グリーンピース9万3,000件を推計し、さらに将来的に追加で14万件が加算されると予測した。

ロシア医科学アカデミーでは、21万2,000件という値を推計していた。

2007年にはロシアのAlexey V. Yablokovらが英語に限らずロシア語などのスラブ系の諸言語の文献をまとめた総説の中で1986年から2004年の間で98万5000件と推計した。

ウクライナチェルノブイリ連合(NGO)は、事故による死亡者数を約73万4,000件と見積もった。

京都大学原子炉実験所の今中哲二氏は、チェルノブイリ事故の被曝の影響による全世界の癌死者数の見積りとして2万件から6万件が妥当と見解を述べた。


予想数値については、旧ソ連に関係の深い国ほど予想している数値が高かったということも留意すべきである。ソ連の科学者の予想数値が国際会議上で1/10に修正されたり(1/10にされて抗議をしなかったのだろうか?)、ソ連単独で予測値を発表する際には、他のどんな研究機関よりはるかに大きな数字が示されている事に注目して欲しい。このような大きな隔たりのある数値を世界に提供したがゆえに、西側での反核運動のうねりが高まる中、ソ連は以前と変わらず自国の核開発を悠悠と継続していたのである。
また、このような数値予想と同時に並行して、食道閉鎖、肛門閉鎖、膠原病無脳症、小頭症、多指症、免疫不全症候群、神経繊維腫症やプロテウス症候群、はてはダウン症などの原発との因果関係が無い疾患をチェルノブイリ事故と関連があるかのように録画・放送する等の宣伝工作活動が、西側の著名な環境団体を通じて行われていたことも覚えておくべきである。
同じ手管に陥ってはならない。通常時の事例発生確率と比べ異常かどうかは医学的判断を仰ぐべきである。

ちなみに、UNSCEAR は福島においては将来における被害はないと推定している。念のため。

反核兵器・平和運動は全ての核兵器を廃止し、平和に資するものでなければなりません。特定の国家や団体の思惑に乗ってはいけません。
そして、核の平和利用は日本をはじめ、独、スイス、スウェーデン、カナダその他の多くの国々で実現してきた現実的な手段です。「核即悪の論理」を振り回す人たちの中にプロパガンダで行動している人間がいる可能性があることを疑うべきです。